地球上には鍾乳洞が点在しています。ゆっくりと時間をかけて成⻑する鍾乳⽯には何億年という原始の記憶が蓄積されています。その圧倒的なスケールの時間を⽬の当たりにした時、私達は⾃らの⼩ささ、そして⾃らが宇宙を構成する⼀要素であることを認識します。
私の作品もまた制作過程における時間の蓄積で構築されています。あくまでもプロセスに重⼼を置き、具体的なモチーフは決めずに絵を描き、⽊を削り、彫り、時間を蓄積していきます。まさに鍾乳洞の中で感じるように、鑑賞者に私の芸術作品の中に存在する時間を意識し、宇宙との繋がりを感知してほしいと考えています。還元された個である我々が宇宙を構成する⼀要素であることを実感として理解すれば、多様性と共感の重要性を理解することができます。類⼈猿と猿との境界であり、ヒトをヒトたらしめるバロメーターである”共感”。それはこの殺伐として争いの絶えない現代社会において⽋乏しかけているものであり、私の作品を通じて、その共感をどのように再⽣すべきか提⽰したいと考えています。