橋本曼荼羅

Overland×橋本 仁 コラボレーション企画

-人と文化が交わる場所×表現・生活・アート-

表参道Overland Gallery

私は現代アートとして主に立体作品を用いて表現活動をしているアーティストです。ここにある工芸品は、私の表現における概念を生活(=工芸)に転嫁したもので、厳密にいえばこれは工芸品としてあるのではなく表現媒体として”在る”のです。

日本人は古来から美術表現を工芸として捉え、生活の中に日本の美をしつらえたり、誂えたり、見立てたりすることでその方法を”表現”として見なしてきました。我々のDNAの奥深くには、その香りが今も厳然と漂っています。

私は主に鉄を素材として用い、身体的反復性から生み出された現象を蓄積することで、万物の根元的な在り方を表現しています。これは前述したとおりモノは結果であり行為(=方法)そのものが表現であるという日本流の表現方法に乗っ取った考え方です。

根元的な在り方を知るということは自分自身と自分を包括するものとの膨大な記憶に気付くということです。そこには世界や日本のみならず、人間社会が現代的な”豊かさ”とは関係なく生き生きとしていた時代の、とても大事な鍵が隠されていると考えています。しかし、ARTだ表現だと急にそんなことを言っても殆どの人は自分の目の前にある仕事や家庭のことで手一杯なため、理解ができません。

したがって、私は社会や個人に語る前に日本人のDNAに語りかけようと思いました。現象性を用途のための技術とし、存在の根元性を使途とし、記憶と身体性は鎚目の中に鍛き込み、私の生きた時間の蓄積は、まさに今対峙するその作品の内奥に。
今回の新たな試みにおいて、私は特に2つの点に配慮をしました。

 

一つは日本の伝統技法の手仕事で造ること。
もう一つはなんでもかんでも造るのではなく、作品としてのコンセプトからずれないこと。

1つめは私自身が大学で鍛金技法を学んでいたということで、日本の伝統金属工芸技法である「鍛金」という技術を用いています。鍛金とは、主に銀や銅の板材を使い、金槌とあて金のみで一枚の板から成型していく我が国屈指の伝統技法です。

次に私の表現活動との一貫性は、まさに”関わり”ということにあります。私が酒器を中心に展開しているわけは、お酒は人間社会における世界共通のコミュニケーションツールであると私は考えるからです。(宗教的に厳密な禁止を課せられたところを除き)呑める呑めないに関わらず(現に呑めなくてもお酒を呑む”場”が好きだという人はたくさんいます。)、お酒は適度に楽しむことで非常に有用なコミュニケーションツールとなり食との相乗効果により社会を動かす機能の大きな役割を担っています。お酒を媒体として人と人とが繋がり、やがては一つのコミュニティを形成していくような在り方は社会における芸術の在り方とよく似ています。

 

芸術表現とは、人が人に向けるあらゆるコミュニケーションを総合し純化させたものです。決して一方的な発言であってはならないもので、鑑賞者に内在するなにものかに呼び掛けそれを喚起し社会へ還元するという立派な社会活動です。制作者は時代ごとに衰退していく鑑賞者の感応力というものに留意しなくてはなりません。しかし、あまりに卑屈になりすぎるとそれは只の商品となってしまい表現の根元性は失われてしまいます。非常に絶妙なバランス感覚と勘を必要とするかなり神経質な分野だとも言えますが、そこが芸術表現の醍醐味の一つだと言えるでしょう。

長々と私と表現と生活についてを述べてきましたが、最終的には芸術も工芸も作者の意図は関係のないものとして、鑑賞者や購入者の好きなように楽しんで頂けることが何よりのことだと私は思っています。ただ、ほんの少しでも世界に優しさと寛容さが増えることを願いながら。

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